*
*
子供がすくすく育つための<家庭環境の正常化>

子供の睡眠

sleep00
子供を健やかに成長させるための睡眠の知識と方法が理解できます。

子供にとっての睡眠の役割

睡眠は脳を作り、脳の働きを育て、脳を守る大切な時間です。胎児から成人に至るまで共通する睡眠の重要な働きです。ヒトは身体が疲れるから眠るのではなく、脳の働きを保つために眠ります。

どんなに勉強をしても睡眠を取らなければ、学力は身に付きません。どんなに練習をしても睡眠を取らなければ、体は鍛え上げられません。勉強も部活もスポーツも習い事も、実際の努力を実にするのが「睡眠」の役割です。

特に身体の成長をうながす成長ホルモンは、夜10時頃から午前2時頃にかけてもっともよく分泌されます。成長ホルモンの分泌で、骨、筋肉、血管の細胞が増え太く成長します。正しい時間に眠ることは子供にとって非常に重要なのです。

赤ちゃん・子供の脳は、眠っている間に神経経路網を作り、シナプスや神経伝達物質の点検・修理をすることでその働きを守っています。

睡眠健康は睡眠障害の子供よりも1日4倍の力を発揮

不適切な睡眠によりフクロウ症候群になる子供がいます。フクロウ症候群は、夜型の生活により、ボーッとした状態で朝を迎え、吐き気や高熱が伴う症状を起こす小・中・高生を指します。

睡眠が健康な子供は、活動と休養のホルモンと神経伝達物質が本来の時間に放出されているので、生活にメリハリがありますし、本格活動時間帯に100%の力を使って活動できます。

1日に16時間も100%で活動できます。

フクロウ症候群の子供は、昼前に起きて夕方までは活動準備状態で0%~60%の力での活動が持続します。そして、ようやく体調が夕方に調子が整い始め、本格活動時間帯は60~80%のパフォーマンスしか出せません。

なんと1日に6時間しか60~80%で活動できません。

睡眠が健康な状態で発揮できる力が16×100=1600だとすると、フクロウ症候群の場合は、1日6×70=420ですから、4分の1以下になるとも言えます。睡眠健康な子供は睡眠障害の子供よりも1日4倍の力を発揮するのです。

日本は遅寝・短眠の文化が浸透している

NHK放送文化研究所『日本人の生活時間 2015』を参考にすると、日本人全体の平均睡眠時間は1960年には8時間13分から2010年は7時間14分、2015年は7時間15分となっています。

イスラエルの著名な子供睡眠研究者のアビ・サデー氏らの調査では、日本の乳幼児の1日の総睡眠時間は11時間37分と17カ国・地域中で最も短く、最長のニュージーランドと比べて、約1時間40分も少ない結果となりました。

パンパース赤ちゃん研究所が2004年に発表した0~4歳児の睡眠に関する実態では、日本の赤ちゃんは46.8%が夜22時以降に寝ていることが分かりました。フランスとドイツが16%、イギリスが25%とスウェーデンが27%と考えると、赤ちゃんの頃から日本人は夜更かし体質に育てられているということが分かります。

恐ろしいのはこれが2004時点の調査で、今や個人の給料が上がらず、システムが多様化し、SNSやネットによって多忙を煽られている日本では、もっと遅寝体質になる可能性があるということです。

夜更かし・遅寝の生活習慣は小学生、中学生、高校生と学校年度が上がるごとに常態化していきます。

睡眠が悪い子供は脳の海馬が小さい

東北メディカル・メガバンク機構の瀧靖之教授らが、5歳から18歳までの290名の健康な子どもの脳と平日の睡眠時間の関係を特殊な機械を使って計測したところ、睡眠時間が長い子どもは、そうでない子どもよりも、脳の海馬が大きいという結果が出ました。

海馬は脳の中でも、唯一成人後も細胞分裂も繰り返す部分です。海馬は学習内容を記憶する領域で、空間学習能力に大きく関わりすます。海馬はストレスで神経細胞が破壊されます。睡眠によって、心理的回復が得ることが大切です。海馬は、アルツハイマー病における最初の病変部位で、心的外傷後ストレス障害(PTSD)・うつ病の発症にも関連します。

睡眠習慣の悪さが子供に与える影響

睡眠習慣が悪化すると、脳にあらゆるダメージが加わります。睡眠や発達の研究では、睡眠障害によって、以下のような影響が子供に出ると言われています。

・学習意欲の低下
・学力の低下
・免疫力の低下
・持久力の低下
・発達障害
・不登校
・ひきこもり
・肥満
・うつ病
・糖尿病
・内分泌疾患
・代謝疾患
・悪性腫瘍

睡眠の障害は、日常的な意欲を減らすだけでなく、あらゆる病気の環境的要因となっているのです。睡眠が不足すると、睡眠によって保たれている脳のシナプスや神経細胞の働きが低下し、情報処理能力も低下します。情報能力が低下すると、覚醒しても不快感が持続し、イライラし、集中力が下がります。

睡眠障害とADHD・自閉症には深い関係がある

兵庫県立リハビリテーション中央病院・子供の睡眠と発達医療センターの三池輝久センター長は、30年で約4000名の臨床経験、1万人を対象に実施した睡眠実態調査で、子供の睡眠の状態が発達障害や不登校・ひきこもりと深く関係していることを明らかにしました。

子供の睡眠および発達の研究者の間では、注意欠陥多動性障害(ADHD)や自閉症の子供の多くに「睡眠障害」が共通することが知られていました。

子供が睡眠障害で発達障害や自閉症になる理由は、体内時計の形成不全が起こるからです。体内時計は、地球が自転で1回転する24時間を基礎にして、朝になると目を覚まし、夜になると眠くなるなど、ヒトの生体リズムを刻む時計です。体内時計は皮膚、筋肉、心臓、血管、臓器など全身に張り巡らされていますが、脳の視床下部の視交叉上核にある脳時計によってコントロールされています。人が疲れる原因は体内時計の混乱から自律神経機能のバランスが崩れてしまうためです。

また、体内時計が混乱し、脳機能が低下すると、小児慢性疲労症候群が発症します。

小児慢性疲労症候群

慢性的な疲れや倦怠(けんたい)感が続き、早寝早起きができなくなる病気。複雑な課題を処理する際に過剰に神経が働き、疲労を増ます。3カ月以上の持続する疲労・倦怠感および睡眠・覚醒リズム障害などの症状が現れます。お年寄りが罹る認知症に類似しています。

睡眠習慣により朝食を取らずにいると学力は下がる

文部科学省の「全国学力・学習状況調査」では、朝食を毎日取ることができない子供は、毎日朝食を取ることができる子供に比べて、学力が低いことが明らかになっています。

東海大学体育学部の小澤治夫教授は、高校生の血液を検査し、1万4447名の小・中・高校生を対象にかなり大規模なアンケート調査を行ったところ、男子31.7%、女子47.7%が貧血傾向にあり、この原因が朝の食事の無摂取によるものだと分かりました。

眠りたいのに眠れない理由

情報交換がスムーズにできない脳の一部の領域は、いずれ強いストレスを感じるようになり、脳細胞の興奮を起こします。「興奮が高まった一部の領域」が「眠ろうとする脳の領域」を押さえ込んで、「眠れない脳の領域」や「何度も目が覚める脳の領域」を作り出します。

脳の一部が興奮しやすく、リラックスしにくい現代の生活環境は、まさに常時「眠りたいのに眠れない」環境になりやすいのです。特にスマートフォンは、SNSやゲームやネットニュースなど、常に更新し、双方向性で、24時間絶え間なく強い刺激を受けるようになります。

今の時代は、寝付けないほど脳の一部の領域のテンションが上がっている「強くて速い刺激」を受け続けやすい環境にあります。テレビやスマホやネットは常に昼を作り出しているようなものです。自分で夜を作らないのと同じ状況です。

子供は寝だめすれば良いは嘘

寝だめとは、これまで不足している分の睡眠時間を補うことで、これから必要な睡眠時間を先取りすることではありません。寝だめは体内時計が狂うので、実はあまりオススメできません。

日によって睡眠時間が大きく異なると、時差ぼけで体調が優れないのと同じような状態になります。時差ぼけは、睡眠と覚醒のリズム、ホルモン分泌、体温調節という3つの生体リズムが意地的に狂ってしまった状態です。

毎日きちんと適切な睡眠で頭・脳・心・体を休めるように心掛けて下さい。

子供の理想的な睡眠時間:新生児~高校生まで

睡眠時間

・新生児(1~2ヶ月)…10.5~18時間
・乳児(3~11ヶ月…夜間9~12時間、昼間に1~4回の30分~2時間の昼寝
・幼児(1~3歳)…12~14時間
・学童前期(3~5歳)…11~13時間
・小学校低学年(6~9歳)…9~10時間
・小学校高学年(10~12歳)…8~9時間
・中学生(13~15歳)……7.5〜8時間

新生児

授乳と排泄で2~3時間ごとに目が覚めては起き、何回も寝るという睡眠-覚醒リズムになります。1日のうちにトータルで16~18時間は眠っています。

生後1~3ヵ月

生後2ヵ月ごろまでの赤ちゃんは、1日24時間の周期よりも少し長い生活リズムになり、睡眠時間が少しずつ後ろにズレて昼夜逆転傾向になる赤ちゃんもいます。生後3ヵ月頃になると、昼と夜の違いが身に付き、昼夜逆転が少しずつ減っていきます。生後1~3ヵ月は体内時計が24時間周期に移行する時期です。1日の総睡眠時間の目安は15~17時間です。

生後4~6ヵ月

どんどん昼夜の区別がはっきりし、夜の睡眠も長くなります。夜は8時、遅くても9時に眠りにつき、朝は7時、遅くても8時には起きる就寝・起床時刻の安定した生活リズムを作って下さい。すると、夜だけで10時間のまとまった睡眠が確保できます。1日の睡眠総時間の目安は12~13時間です。

生後7~12ヵ月

生後6ヵ月を過ぎると、夜泣きが始まり、何度も泣いて目を覚まします。生後9ヵ月を過ぎると、一度眠ると途中であまり起きないような睡眠のリズムができます。1歳になる頃にはほぼ24時間周期の昼夜リズムに同調します。午前と午後に昼寝を取る睡眠は残るので、1日の総睡眠時間の目安は11~13時間です。

1~2歳

1歳を過ぎると夜の睡眠が10時間ほど続くのが一般的です。一度寝ると朝まで目を覚まさないようになります。加えて、1~3時間の昼寝が加わります。昼寝は時間と回数がともに減っていき、昼寝をする時間帯が一定していきます。1歳~2歳は夜7時から朝7時までの中に9~11時間の基礎睡眠時間を確保するようにしましょう。

3~6歳

3歳以降は、夜10時間睡眠と昼寝の1~2時時間を足して、1日の総睡眠時間が11~12時間であることが理想です。

小学生・中学生・高校生以上

平日、休日に就寝時刻と起床時刻が安定していることがベストです。多忙を極めて、適切な睡眠時間が確保できてないという事態があるのであれば、習い事を減らすなどの必要も出てきます。

簡単にできる良質な快眠を作る12個の対処方法

方法1、寝る時は部屋を暗くする

夜明るいというのは、今の日本では普通ですが、本来の人間にはあり得ないことです。つまり、夜はそもそも暗くなくてはいけません。寝る時は部屋を暗くしましょう。

方法2、寝る前にデジタルメディアには触れない

目が冴えたり、脳の「眠ろうとする部分」よりも、他の部分が活性化し、眠りたいのに眠れないという状態が起こります。

方法3、親も子供と同じタイミングで寝る

家族が一丸となってメリハリを付けて夜を締めくくることで、睡眠ムードを作ることができます。親がぐっすり眠ることは、育児不安の解消にも繋がります。

方法4、寝る前に熱いお風呂は避ける

お風呂に入ると、睡眠状態では下がっていなければならない深部体温が上がります。就寝の2時間前には入浴を済ませておきましょう。ちょうど体温が下がる2時間後頃に寝つきが良くなります。もしくはできるだけ「ぬるま湯」にしましょう。

方法5、寝る前の食事は避ける

夕食は早ければ早いほど良いです。夜7時頃、遅くても就寝時刻の2時間以上前には済ませましょう。

方法6、毎日、朝日をしっかり浴びる

朝が来たら、朝日を浴びるのが1日の始まりの理想です。光の刺激が脳の視交叉上核に伝わると、体内時計のズレがリセットされ、身体活動を優位にする交感神経が働きます。副腎皮質からコルチゾールが分泌され、体内環境が活動に適した状態へシフトしていきます。

方法7、毎朝、朝ご飯をきちんと食べる

体内時計を適正に保つ秘訣は決まった時間ごはんを食べることです。そして、朝は1日のパフォーマンスに関わる大事な食の時間です。よく噛んでしっかりたっぷり摂っていきましょう。

方法8、昼寝は午後12時~3時までに済ませる

昼寝が遅くなると、夜に眠れません。午後12時~3時までに昼寝を取って、夜の睡眠も快適になるように心掛けて下さい。

方法9、快眠グッズを購入して睡眠環境を高める

ベッド・布団・毛布・枕を良いものに変える、寝室を綺麗に掃除する、快眠グッズを試してみる、エアコン・加湿器・扇風機などで睡眠環境を微調整するなど、小さなことでも快眠度を上げることができます。

特にアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の子供の場合は、寝間着の素材を変えるなどの工夫も必要です。身体のかゆみなどがある際は、塗り薬を短期的に使って、眠るのも1つの方法です。

方法10、昼間に充実した心身の活動を行う

ストレスがあまりにも大きいのはおススメできませんが、昼の活動の充実度は、夜の睡眠のすっきり度にそのまま直結します。

毎日、主体的疲労感を感じることができれば、それだけで良い眠りになります。

方法11、ベッドに入ってからの考え事はやめる

ベッドに入ったら寝ることに集中して下さい。正しく寝ることは、成績にも部活にも恋愛にも外見にも内面にも大きく関わると考えると、正しく寝ないと損と感じますよね。ベッドにはいったら、休息モードになります。就寝前は身体をリラックスさせて、交感神経を鎮め、副交感神経の働きを高めましょう。

方法12、週間睡眠習慣を記録する

スマホやタブレットのアプリストアで「睡眠」と検索すれば、睡眠時間を記録できるアプリがたくさん存在します。

ただし、スマホそのものを睡眠と近づけておくことが睡眠に悪影響になりますから、1日1時間単位で24マスある手帳やスケジュール帳に0.5時間単位で睡眠時間を塗っていくのがオススメです。手帳の場合は、見開きで1週間になっていて、1日1時間単位で24マスを記入できるシートも売っています。見開きで夜間基本睡眠時間、リズム、質、時間帯のすべてが分かります。

充分な量でリズムとバランス良く塗られていれば、それだけ脳も身体健やかに成長していることを意味します。この記録を取ることで、きちんとした睡眠へのモチベーションが高まっていきます。

最後に:寝る間は惜しんではいけない

活発な部活やクラブ活動、お稽古、習い事、塾、家庭教師、レポートの提出、宿題、テスト勉強、受験勉強など、マルチに頑張ることは悪いことではありませんが、子供はスーパーマンではありません。

寝る間が圧迫されるのであれば、それは明らかな「やり過ぎ」です。二頭とは言わず、三頭と四頭と追っても、寝る間がなければ、一頭も得られません。

睡眠は脳と身体を育てるボーナスタイムです。習い事で蓄えた知識や部活で鍛えた技術は、睡眠を通して、学力や体力へ生まれ変わります。睡眠というフィルターを通さずに、一生懸命頑張っても何も身に付かないのです。

<参考資料>
・『日本人の生活時間・2015』NHK放送文化研究所
・『子どもの夜ふかし 脳への影響(集英社新書)』三池輝久

キーワードから検索しよう

悩み、興味、子供の状況などを検索して、よりよい情報閲覧しよう。

新着情報で日々詳しくなろう!
<最近のブログ>

579-01
548-01
518-01
505-01
482-01
464-01
さらに記事を読み込む